ディアボロス

法廷ものの映画としては異色の作品です。

原題”Devil’s Advocate”「悪魔の代弁者」とは、議論の多数派に対してあえて批判や反論をする人、またその役割を言います。

もともとはカトリック教会で聖人を選ぶ(「列聖」)際に、人生の質を担保するために、あえてその人物の問題点や短所等をあげつらう役目を担う職位を置いていたことに由来するようです。

悪魔役のアル・パチーノさんの怪演だけでも楽しめると思います。

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【弁護士が観た映画『ディアボロス』】「無敗」という虚栄心の罠と、法律家が最後に見つめるべきもの

これまで、いくつかの映画を通じて「組織の保身」や、客観的な目線を持つことの難しさについてお話ししてきました。今回ご紹介する『ディアボロス/悪魔の弁護人』は、視点をガラリと変え、私たち「弁護士自身の心の中に潜む、最も恐ろしい罠」を容赦なく描き出したリーガル・ホラーサスペンスの名作です。

主人公のケビン(キアヌ・リーブスさん)は、フロリダで驚異の「無敗」を誇る若き俊英弁護士。児童買春の罪に問われた教師の明らかに有罪である空気をも、冷徹な法廷戦術でひっくり返し、無罪を勝ち取ります。その卓越した(しかしどこか冷酷な)手腕を買われ、彼はニューヨークの巨大法律事務所のカリスマ代表ミルトン(アル・パチーノさん)に破格の条件でスカウトされます。 富、名声、華やかな生活のすべてを手に入れたケビンですが、彼が「勝つこと」だけに執着し、家族の悲鳴を無視し続けた結果、取り返しのつかない精神的な破滅へと突き進んでいくことになります。

大俳優アル・パチーノさんが演じる法律事務所の代表弁護士が、実は「悪魔そのもの」だったという設定ですが、これは比喩ではなく、法律を扱う人間が誰しも陥りかねない心理を突いています。

見どころ:悪魔が囁く最大の武器は「虚栄心(プライド)」

劇中、悪魔であるミルトンはケビンに犯罪を強制するわけではありません。ただ、ケビン自身の心にある「負けたくない」「俺は天才だ」という強烈な虚栄心(ヴァニティ)を優しく刺激し続けるだけです。 ケビンは、妻が孤独から心を病み、助けを求めている瞬間でさえ、「いま裁判を降りたら、俺の無敗記録が汚れる。勝ってから妻を救えばいい」と、法廷での勝利を優先してしまいます。

悪魔ミルトンが放つ、「虚栄心は、私が最も愛する罪だ。実に見事なセルフ・エゴを育んでくれる」というセリフは、すべての法律家の胸を冷たく突き刺します。

弁護士にとって、依頼人の利益を守ることは当然の職務です。しかし、依頼人の最善の利益は必ずしも、裁判に勝つことであるとは限りません。紛争の当事者の相手方にダメージを加えることが他方の被害回復に貢献する場面も当然ありますが、そうではないことも決して少なくありません。

毒蛇に噛まれた際に必要なのは、憎たらしい蛇を捕まえてとっちめることではなく、抗毒素血清の投与等の治療を受けることです。ですが、対人的な紛争に巻き込まれると、相手を打ち負かすことで自分の傷が癒えるような感覚に支配されてしまいがちで、特に離婚や男女問題ではこの点は顕著です(THERE IS NO SPOONの関連記事はこちら)。

そして、弁護士自身も、代理人の利益追求という大義のもとで、自分の虚栄心を満足させる欲求に駆られる誘惑にさらされることになります。。そうして、いつの間にか目的が「目の前の困っている人を救うこと」から、「自分の実績のため」「相手を論破して打ち負かして自分のプライドを満たすため」にすり替わってしまったとき、弁護士は本当の意味で「悪魔の弁護人」に成り下がってしまいます。

弁護士の目線:勝敗の先にある「依頼者のこれからの人生」を見つめる

私が日々向き合っている医療事故や介護過失、あるいは離婚や親権を巡るトラブルの現場は、当事者双方のプライドや感情が激しくぶつかり合う場所です。

特に、病院や介護施設といった大きな組織を相手にする場合、彼らは「組織のプライドや看板」を守るために、どれだけ不誠実に見えても事務的な正論で防御してきます。一方で、被害に遭われた側も、あまりの理不尽さに「絶対に相手の非を認めさせて謝罪させたい」と、一歩も引けない心理状態になるのは当然のことです。

離婚事件でも、浮気をした夫と不貞相手を地の果てまでも追い立てて制裁してやりたいという心理になって、幼い子供を抱えながら心は愛児よりも憎い夫たちに向いて戻せないという事態は決して稀にしか起こらないわけではありません。

だからこそ、間に立つ弁護士は、ケビンのように「自分の戦術の勝利」に酔ってはいけません。 今進めている手段は、本当にこのご遺族の無念を晴らすことになるのか、不貞に苦しんだ妻が今後、子供たちと前向きに生きていくために役立つのか。この泥沼の交渉に勝つことは、傷ついた依頼者の方が「次の新しい人生」を前を向いて歩き出すための本当の果実になるのか。 常に一歩引いた視座を持ち、法律という冷徹なシステムを扱いながらも、心には血の通った誠実さを失わないことが何より大切なのだと、この映画を観ると強く戒められます。

まとめ:選択の重さを知るサスペンス

『ディアボロス/悪魔の弁護人』は、スタイリッシュな法廷劇から、終盤に向けて息をのむような心理ホラー(というよりもSF?)へと変貌していく、見応え抜群の大人のエンターテインメントです。私たちが日々行う小さな「選択」の積み重ねが、いかに未来を変えてしまうかを教えてくれます。

もし今、あなたが周囲の理不尽な対応や、誰にも言えない家族の問題に直面し、「どう選択すればいいのか分からない」「感情の渦に巻き込まれて、本当の目的を見失いそうになっている」と苦しんでいるなら、その混沌とした胸の内を私に聴かせてください。

[当事務所の受付について] たいよう法律事務所では、医療事故・介護事故・学校トラブル・離婚問題など、専門的な証拠分析と、人生に深く踏み込む丁寧な対話を必要とする事案について、幅広くご相談を承っています。 どのような複雑な状況であっても、まずは現状を冷静に整理し、最善の選択肢を一緒に考えてまいります。お困りの際は、どうぞお早めに画面下のボタンからお気軽にご連絡ください。

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