他人に迷惑をかけないなんてくだらないことを誰が言ったのかしらないんですけれども、人間はいるだけでお互いに迷惑なんです。お互いに迷惑をかけあって生きているんだというふうに認識すべきだってぼくは思う。

宮崎駿
日本では、子どもに「他人に迷惑をかけてはいけません」と教えることが多いようですが、インドでは「あなたは他人に迷惑をかけて生きているのだから、他人のことも許してあげなさい」と教えるそうです。

乙武洋匡
I can do things you cannot, you can do things I cannot; together we can do great things.
私にはあなたにできないことができます。あなたは私にできないことができます。私たちが一緒に力を合わせれば、きっとすばらしいことができるでしょう。


人間関係の「貯金」を増やす:相互依存のパラダイムと信頼口座
法律相談の現場で、私たちは日々「壊れてしまった人間関係」の修復や整理に立ち会います。夫婦、親子、ビジネスパートナー……。一度失われた信頼を取り戻すのは、並大抵のことではありません。
なぜ、あれほど親密だった関係が、ある日突然「地雷原」を歩くような緊張状態に変わってしまうのでしょうか。その答えは、『7つの習慣』が提唱する「相互依存のパラダイム」と「信頼口座」という考え方の中にあります。
1.自立なしに「相互依存」はありえない
まず、確認すべき非常に厳しい現実は、「本当の意味で自立していない人間に、効果的な相互依存(協力関係)は築けない」という原則です。
第1から第3の習慣で学んだ「自分を律する力」がないまま、人間関係のテクニック(話し方や交渉術)だけを磨こうとするのは、数学でいえば「代数を学ばずに微積分を解こうとする」ようなものです。 自分の感情をコントロールできず、依存心の強い人が、いくら表面的なスキルを使っても、相手はどこかでその二面性や不誠実さを感じ取ります。
「私的成功(自立)」は、「公的成功(相互依存)」に先立ちます。自分自身に打ち克っていない人が、他者と良好な関係を築くための近道はどこにも存在しないのです。
2.「信頼口座」:人間関係の安心感のバロメーター
コヴィー博士は、人間関係における安心感や信頼のレベルを、銀行の預金口座に例えて「信頼口座」と呼びました。
- 預け入れ(デポジット): 礼儀正しく接する、親切にする、約束を守る。これによって残高が増え、多少のミスや言葉足らずがあっても「あの人なら大丈夫」と許容してもらえるようになります。コミュニケーションは驚くほどスムーズになります。
- 引き出し(ウィズドロー): 無礼な態度、無視、約束を破る、自分の意見を押し付ける。これらが積み重なると残高が底をつき、口座は「赤字」になります。
信頼口座が空っぽの状態では、相手の顔色を伺い、一言一句に気を遣わなければなりません。多くの組織や家庭は、この「信頼の倒産状態」にあるために、膨大なエネルギーを裏工作や自己防衛に費やす羽目になります。
3.信頼を積み立てる「6つの預け入れ」
では、具体的にどうすれば信頼を貯めることができるのでしょうか。博士は、特に重要な6つの方法を挙げています。自分が信頼している人の自分に対するスタンスを思い浮かべてみると納得が行くと思います。
① 相手を理解する
これがすべての預け入れの鍵です。自分にとって良いと思うことが、相手にとっても良いとは限りません。 ある父親は野球に全く興味がありませんでしたが、野球好きの息子のために夏休み中メジャーリーグの試合を見て回りました。「そんなに野球が好きなのか?」と聞かれた彼はこう答えました。「いや、それくらい息子が好きなんだ」。 相手が大切に思っていることを、自分も同じように大切にする。そこから本当の信頼が生まれます。
② 小さなことを気遣う
人間関係において、小さなことは実は大きな意味を持ちます。 ちょっとしたお礼の言葉、体調を気遣う一言、あるいは寒い夜に眠っている子供にそっとコートをかけてあげるような小さな優しさ。これらが、相手の心の奥底にある「柔らかな部分」に届き、大きな預け入れとなります。
③ 約束を守る
約束を破ることは、信頼口座に対する最も大きな引き出しの一つです。 「次に約束してもどうせ守らないだろう」と思われてしまえば、関係を修復するのは極めて困難です。守れない約束は最初からせず、どうしても守れなくなったときは、誠意を持って事情を説明し、撤回させてもらう勇気が必要です。
④ 期待を明確にする
トラブルの多くは「そんなはずではなかった」「言ってくれればやったのに」という、期待の食い違いから生まれます。 新しいプロジェクトや結婚生活を始める際、最初にお互いが何を期待しているのかを、洗いざらい出し合うことが重要です。期待を曖昧にしたまま「察してくれるだろう」と甘えるのは、引き出しを増やす原因となります。
⑤ 誠実さを示す
誠実さとは、単に嘘をつかないこと(正直)以上を意味します。 博士が説く最も大切な誠実さは、「その場にいない人に対して忠実であること」です。 誰かの陰口を言っている姿を周りの人が見れば、「自分がいないときには自分の悪口も言っているだろう」と不信感を抱かせます。逆に、いない人を擁護し、裏表のない態度を貫くことで、その場にいる人たちからの絶大な信頼を得ることができます。
⑥ 引き出してしまったら心から謝る
もし、感情的に怒鳴ってしまったり、勘違いで相手を責めてしまったりして、口座から引き出しをしてしまったら、すぐに「私が悪かった」と心から謝罪することです。 これには、非常に強い人格と安定した内面が必要です。自分に自信がない人ほど、謝ることで自分が弱く見られることを恐れ、正当化しようとします。しかし、勇気ある謝罪こそが、失った信頼を埋め合わせる唯一の道です。
4.「無条件の愛」という究極の原則
最後に、特に親子関係や夫婦関係において大切なのが「無条件の愛」というパラダイムです。
多くの人が、相手が自分の望む通りにしたときにだけ愛を与える「条件付きの愛」という脚本に従っています。しかし、これでは人間関係はギブ・アンド・テイクの取引、契約のようになり、相手は防衛的になり、反発を強めてしまいます。 「あなたがどんな選択をしようとも、私の愛は変わらない」という無条件の受容があって初めて、相手は安心して自分の内面を見つめ、正しい人生の法則(協力・誠実など)に従って生きる自由を得ることができます。
これは、甘やかすことではありません。相手の可能性を信じ、一人の人間として尊重し続けるという、最も忍耐を要する高い次元の愛です。
結びに:問題が「関係を深めるチャンス」になることも
法的紛争にも、既存の家族や親族、友人、職場の人間関係がこじれてのトラブルもあれば、交通事故のように赤の他人との間で起こる事故、医療事故や介護事故、労働事故、学校事故等人間関係のある場面で起こる事故もあります。
法的な責任問題としてしっかりと清算すべき問題もあれば、中には、トラブルや問題を契機として関係修復を図るのがふさわしい問題もないわけではありません。
たいよう法律事務所は、このような事案については、「復縁支援」という形で、こうした「信頼の再構築」という視点も含めた解決をご提案しています。
















